#流行(はや)レシピ、廃(すた)レシピ 【第1回】AIスピーカーのレシピ

2017年の流行語大賞にもノミネートされた新語「AIスピーカー」。AI(人工知能)アシスタントと呼ばれる秘書機能を搭載したスピーカーのことを言います。AIアシスタントっていうのは、スマホにも入っていて、「OKグーグル」とか「ヘイSiri」とか話しかけると、今日の天気や予定など、聞いたことをおしえてくれるアレのことです。
一応、はやりモノなので「AI」を名乗りはしていますが、このスピーカーがどんどん知恵をつけて人に説教したり、人の仕事を代わりにやってくれる……なんてことは今のところありません。コンピューターの機能を持ったスピーカーくらいに考えておいていいでしょう。ちなみに進化したスピーカーという意味で「スマートスピーカー」なんて呼ばれることもありますが、ほとんど同じ物を指します。

2017年には日本でも、グーグルが「グーグルホーム」、LINEが「Clova」、アマゾンが「アマゾンエコー」などのAIスピーカーをつぎつぎ発売。スピーカーっていうくらいなので音楽を聴くのには最適で、しかも音楽配信サービスとネットでつながっているから、さらに便利です。「ディスコミュージックかけて」とか言うだけで、それっぽい楽曲を探して流してくれたりします。

■未来を感じるハンズフリーレシピ

そんな基本機能に、「スキル」などと呼ばれる、スマホのアプリのような機能を載せると、声で指令を跳ばして、いろんな仕事をさせることも可能に。アマゾンエコーを例にすると、「アレクサ、○○呼んで(○○はスキルの名前)」と声をかけ、使えるスキルだけで、すでに数百種類もあります。

ピカチュウとおしゃべりができる「ピカチュウトーク」とか、英単語を学習する「キクタン」とか、「食べログ」「ぐるなび」などのグルメ情報スキルなどが、日本での人気スキルとして知られ、スマホのアプリ並みに種類も充実しています。

AIスピーカーのスキルのいいところは、何といってもスマホの操作要らずで、声だけで、問いかけも答えもやりとりできること。だから手がふさがっていて、スマホの操作ができないときは、とくに便利なツールとなります。

家の中いで手が使えないときというと、一番身近なのは料理をしているときではないですか。ハンバーグをこねながら、「ナツメグ何ふりよ?」とか、パンの生地で手がベタベタになりながら、「この水の量合ってる?」とか。教えてもらいたことが山ほどある料理初心者には、とくに便利そうです。

というわけで、レシピのスキルも各種用意され、定番「クックパッド」やレシピ動画の「DelishKitchen」など、有名どころもすでにスキル化。ハンズフリーレシピへの期待は膨らむばかり……のはずでした。

■キラキラ以外のメリットは期待せずに

ところがです。今のところ、レシピスキルはたいてい、レシピの提案がメインの機能。まあこれだけでも、冷蔵庫をのぞきながら「ネギと豚肉の料理教えて」とかAIスピーカーに声をかけるキラキラしたCMが、明日から流れてもおかしくないですね。でも期待していた肝心のレシピのほうは、使い物にならないスキルが多いのです。

そもそも、レシピにたどり着くまでが大変。レシピスキルの手順はだいたいこんな感じになります。まず「アレクサ、○○を呼んで」とスキルを呼び出します。と、提案してほしいレシピの材料を聞かれるので「豚肉」などと返答、たくさんの料理名を提案してくるので、気に入った料理名を言えば、やっとレシピのスタートです。

ここからも、気を抜くことはできません。「熱したフライパンに、ショウガと細切れにした豚肉を入れ……」などと、どんどん手順を読み上げてしまうので、料理初心者は置いてきぼりの連続。いちいち「ストップ」などと声をかけ、先生を黙らせなければなりません。

とはいえ、今流通しているAIスピーカーは第1世代のようなもの。もっと性能が上がれば、かゆいところに手が届く音のレシピを使えるようになる日も来るかもしれません。そのころには私の料理の腕も、ちょっとはマシに? テクノロジーと競争です。

文・越田芽衣子(Meiko Koeta)